インディアン・ムービー・ウィーク ~ ウイルス

ただいま「インディアン・ムービー・ウィーク」という、インド映画をまとめて上映するイベントが行われている。これは毎年あるイベントで、今年も10本のインド映画がやってきた。先日観た「ウイルス」もその中の一本だ。

 

インド南部、ケララ州のカリカット。そこの病院に、高熱と激しい嘔吐という症状の男性が運び込まれた。処置の甲斐もなく、男性は死亡。そのうち男性の処置に当たった看護師も同じ症状で倒れ、やがて死亡。原因は有効なワクチンも治療法もない、ニパウイルスだった・・・。

 

南インドで実際に起こったパンデミックを下敷きにした作品。

ストーリーは主に対策本部の行動を追っていく。冷静に判断や対応をしたり、粘り強く感染経路を辿ったりする本部。

しかしそんな対策本部にも、ある種の圧力がかかる。その圧力に屈せず、あくまでも冷静に根気強く行動する本部。

また、粛々と目の前に患者に向き合う医療現場の人々。頭が下がる思いでいっぱいになる。

 

こうした本部の行動とは別に、街中の様子もさらりと描かれる。

市場や店が閉まり、売り上げが減って困る人々。

ある医療従事者の男性は家族への感染を防ぐため、病院に泊まり込むことにした。しかし「あのうちの主人は病院から帰ってこない。ウイルス感染者に違いない」という憶測が広まり、物を売ってもらえないという事態が起こる。

また、高熱の男性がタクシーで病院に行こうとするが、「お前は二パだろう」と乗車拒否をされる。

どれも、今のコロナ下でも起こっているようなことで、未知のウイルスへの恐怖は同じなのだ。

 

そして、私も含め、多分多くの日本人が想定しない問題も起こる。

埋葬をどうするか。インドの人の多くを占めるヒンズー教徒は火葬だが、イスラム教徒は土葬で火葬は厳禁。感染予防には火葬が好ましいという意見も出るが、「遺族の悲しみをこれ以上増やしたくない」という意見も。マレーシアなど他国でニパウイルスが発生した時の状況を踏まえ、対策本部のトップはエビデンスに従おうと判断を下す。エビデンスを元に冷静に判断をする本部には、とても頼もしさを感じた。

 

冷静に、粘り強く、粛々と。未知への恐怖へ向き合うために必要なのは、こうしたことなのかもしれない。「今」観るべき映画だと思う。

f:id:shimanon_note:20200930140143j:plain

f:id:shimanon_note:20200930140158j:plain