めいさんのこと

今年も、おせち料理の支度が終わった。あとは盛り付けるだけ。大掃除はまあそれなり・・・だけど、大晦日にのんびりしつつ、すっきりと新年を迎えられるのは、いいものだ。

 

毎年おせちの支度をしていると、いつもめいさんのことを思い出す。

めいさんは、近所にあった小さくて居心地のよいご飯屋を営んでいた方。

基本メニューは日替わり定食だけ。でも、それがとても美味しくて、飽きることがない。近くの小さなオフィスの人は、毎日お昼に来ているようだった。

ほとんど社食のような状態。

家庭料理のようでいて、でもどこか違う。家でも真似できそうで、でもやっぱり真似できない。ほっとするような、でもどこかはっとするような美味しさ。それが、めいさんのご飯だった。

そして、そういうご飯をふくよかな笑顔で出してくれるめいさん。

私はめいさんのファンだった。

 

この街に住み始めた最初の冬。めいさんがおせち料理教室をやることになった。

早速申し込み、わくわくしながら当日を迎えた。

 

メニューはオーソドックスなものもあれば、めいさんオリジナル風のものもあった。

例えば昆布巻き。身欠きにしんを使った昆布巻きは「子供が食べないのよね」と言って、豚の薄切りを巻くのがめいさん流。作る方も楽だし、美味しい。

酢蓮の生ハムはさみ。蓮根を薄めた白ワインビネガーに漬けておく。食べる時に生ハムを挟んで、粗挽き胡椒をふる。簡単で見た目も華やかだ。

炒り鶏はきぬさや以外、全部一緒の鍋で。でも下拵えはきちんと。人参や干ししいたけは飾り切りに。飾り切りのやり方も教えてもらった。

 

最後は一人一人大皿に盛り付け。自分なりに上手くできたと思っても、めいさんチェックが入る。めいさんの手が入ると、ちょっとのことで格段に見栄えが変わる。

その「ちょっとのこと」が難しい。さすがは、めいさん。

 

数年前、めいさんはお店を閉じた。お店の場所を若いご夫婦に譲り、しばらくは陶芸などをされていた。私も一枚だけ、めいさんの作品を持っている。

その後Blogも閉じられ、今はどうされているのか分からない。

もう一度めいさんのご飯が食べたいのだけど。

 

今でも我が家のおせちには、何かしらめいさんのメニューが並ぶ。

今年は炒り鶏を作ってみた。

そして私は、今でも盛り付けが上手くできずにいる。